うめAUDIO(仮称)


作例集・回路図・素人解説 アンプ編3


FET電流帰還アンプ
トランジスタ電流帰還アンプ
BASSブーストの追加
MeierAMP改
PortFull改
 

 

FET電流帰還アンプ回路図


FET電流帰還アンプ回路図(改良)

[2011/02/05 更新]

 http://w3.quake3.jp/sushi-k/goku/goku38.html
 こちらを参考に電圧とアイドリング電流の変更、ドライバ段はC1815/A1015にしました。ややゲイン設定が低いのでボリューム真上くらいを中心に使うにはR7の帰還抵抗を2.2K〜3.3Kくらいに変更しています。ライン出力からとるなら原典どおりで1KΩでいいです。
 初段のK170/J74は出来るだけIdssの近いものを選別して下さい。このIdss値がそのまま初段を流れる電流になるため、R1とR2は使用するJFETに応じて変更してやったほうがいいでしょう。K170/J74がディスコンになって暫く経ちますので入手が困難な可能性がありますね、まだ売ってる店は一応ありますが。追試としてK246/J103などに置き換えが可能かどうか試してみようと思います。

 原典の回路ではバイアス調整部でVR2に直列でLEDを使用しています。今回の構成ではドライブ段の電流が2mA程度と小さいので省略してVRだけにしていますが、電源電圧を変更した場合などVRが熱くなってしまうような場合はLEDまたはダイオードなどを直列に入れるか、C1815と抵抗で構成した定電圧調整の回路を挿入して下さい。ま、ぶっちゃけた話マルツのFETバッファアンプなんかでも抵抗だけで済ませてますしK213/J76やK214/J77を使うぶんにはこれで良いだろうと乱暴な作りだったり。

 組み上げてすぐは負荷を繋がないでまず調整をします。最初にVR2で終段MOS-FETのアイドリング電流を決定します。入力ボリュームをゼロにして信号をGNDに短絡しておいて、R5またはR6の両端にかかっている電圧をテスターで見てやって20mA〜30mA程度になるよう調整します。小さすぎると動作点がなめらかに繋がらずノイズが出ます。大きすぎると発熱が大きくなり熱暴走する可能性が高くなってしまいます。
 VR3 がオフセット調整になります。このオフセット調整をして0Vになるようにします。無調整で数百mA以上が直流電圧として出てしまっているような状態でヘッドホンやイヤホンを繋いでしまうとボイスコイルが焼き切れる可能性があります。
 再度VR2を調整し、またVR3を調整といった具合に何度か繰り返してやって追い込んで下さい。これらの調整VRは互いに影響し合いますし、温度によっても値が変わってくるところなので時間を置いて何度か調整をする事。出来れば8Ω〜16Ωくらいの高精度なセメント抵抗(5W〜10W)で出力からGNDへ繋いだダミーロードの負荷を用意し、同様の調整をしておいて下さい。

 この回路だけだと無電源時にも小さい音で出力が出てしまいます。前段にOPAMPのボルテージフォロアを入れておいたりリレーやフォトMOSリレーなどを入れておいたほうが精神衛生上良いかと思います。

 ちなみにドライブ段までFETにしたフルFETでの回路例が http://www2c.airnet.ne.jp/pandora/labo/amp-currentfeedback/index.html に出ています。こちらはバイアス部がダイオードのみの無調整。これも作ってみるかなー。LED,ダイオード,Vfの小さなショットキバリアダイオードなどの組み合わせでバイアスの電圧を調整、ソース抵抗で電流の微調整といった感じですかね?

[2011/02/05追記]
 DCオフセットは調整トリマだけでは少々安定しないためDCサーボを追加しました。

 

トランジスタ電流帰還アンプ回路図


トランジスタ電流帰還アンプ回路図(改良)

[2011/02/05 更新]

 定本続トラに紹介されている全段トランジスタの電流帰還アンプほぼそのままです。使用したトランジスタはC1815L-GRとA1015L-GRで、回路図中では初段のみ L のローノイズ版で表記しましたが選別ついでに全部 L で組んでしまっています。
 PNPとNPNで結構 hFE がずれて分布してますがあんまり神経質になるところでもないので数値が1割くらいずれていても、まぁ仕方がないと割り切っていいんじゃないでしょうか。なるべく近くなる努力をする程度で。

 初段の電流で後段の電流量がほぼ決まります。JFETとトランジスタの性質上やや前段の構成が違いますが動作原理としては上で紹介しているFET使用の電流帰還アンプと殆ど同じ回路です。電圧でコントロールするか電流でコントロールするかの違いということでいい勉強になりますから両方作ってみるといいかと思います。各段の抵抗をソケット式にしておいてあれこれ刺し変えて実験し、決まったらソケットにハンダ付けしてしまうというのが最近の私のスタイル。ブレッドボードだと別の要因でノイズの出方や動作が変わってしまうことがありますので本番用の基板でやっておくわけです。

 出来上がったFET版の電流帰還アンプとトランジスタ版の電流帰還アンプを数十時間鳴らしておいてから比較試聴、やっぱ鳴り方が少し違うんですね。面白いです。FETのほうはOPAMP+バッファで構成したアンプと近い鳴り方の印象ですがやっぱり電流帰還は違うぜ!という感じのダイナミックな低音が心地よいです。高音の伸び方と音場の広さがこの2者で結構違ったりして、どういう要素が影響してるんだろうかチャンネル間のクロストークやF特など測定して学習してみようかと思います。

 この回路だけだと無電源時にも小さい音で出力が出てしまいます。前段にOPAMPのボルテージフォロアを入れておいたりリレーやフォトMOSリレーなどを入れておいたほうが精神衛生上良いかと思います。

 測定結果:16Ω負荷、通常使用するボリューム位置付近で計測

     
 トランジスタ電流帰還アンプ:二次高調波が結構盛大に出ています→2桁近く改善しました

     
 FET電流帰還アンプ:なかなか優秀な数値

 
 比較用 OPA637BP+TLE2082AI(A47-BUFF):上とほぼ同じ性能

 THDが1%も出ているのはさすがにおかしい。ドライバ段でオフセット調整しようとしてVR入れてあるのが原因かもしれない。再設計〜〜!R3,R4 470→750、R5 130→100、R6 330→150 に変更することで2桁改善しました。

[2011/02/05追記]
 DCオフセットは調整トリマだけでは少々安定しないためDCサーボを追加しました。

 

BASSブーストの追加回路図


周波数応答シミュレーション

[2011/02/05 新規]

 有名所として 「Let's Try 電子マスカット(http://www.zea.jp/audio/index.html)」さんの http://www.zea.jp/audio/hamp/hamp_01.htm このようなBASSブーストがあります。カットオフ周波数の計算式がおかしいような気がしますので今までは http://sim.okawa-denshi.jp/optool.php こちらで伝達関数計算をやってみたりしましたが抵抗+抵抗//コンデンサなものは直接の計算が出来ません。おおよそ抵抗//コンデンサの伝達関数計算やCRローパスフィルタの計算をすることでカットオフの位置はわかりますが実際の回路でどうなるか作ってみて測定、となるとトライアンドエラーの回数が結構多くなって面倒ですね。

 前々からSpiceシミュレータを使ってみようとは思っていたものの、操作がやや難解で挫折したりなんかして放置してました。リニアテクノロジーから出ているLTSpiceが制限もあまりなく好評のようでLTSpice入門編なんていう書籍は買ってあったのですが腰が重くてなかなか手を出せずにいました。シミュレーションをしてみても電源やコンデンサなど理想値としてのシミュレート結果しか出ないので L 成分など追加してやらないとリアルな結果が出てこないというのもあって、あまり使う気になれなかったというのが正直なところです。

 が、今回のBASSブーストについてはシミュレータのお世話になることにして・・・しばし格闘・・・でけた。
 定数あれこれ変えてスイープの様子を見てみるととてもわかりやすい。部品とっかえひっかえする手間がこんなに省けるなんて、もっと早くから触っておけば良かったと反省。

 ともあれ、ブースト率やカットオフ周波数を好みに調整。700〜800Hzくらいから立ち上がりますが実際に音量が変化したと感じるのは2dBを越えてから、明確には3dBからというのが自分の感覚です。100Hzより少し下くらいで+3dBとなるような C の値が0.47uFでした。増幅過多に感じるのは12dBを越えて18dBくらいまでくるとだいぶ不自然に感じます。ということで8dB〜10dBくらいを想定して普段自分が多用している正バイアスの抵抗4.7KΩ・帰還分圧上側の10KΩ・帰還分圧下側の1KΩとの組み合わせでこの数値になるよう選んだのが20KΩ。この20KΩ//0.47uFを帰還抵抗の手前に挟みます。
 スイッチをクローズすると従来のGAIN=11な単純増幅に、スイッチをオープンにするとブーストがかかります。
 特に何の代わり映えもない回路ですが初シミュレーションという記念で掲載。

 ヘッドホンアンプなんてGAIN=1〜2もあればいいじゃない、ということで帰還抵抗を選択している方の回路をよくみかけます。が、うちの定番構成は正バイアスに4.7KΩという低い抵抗を用いることでFET入力とバイポーラ入力のOPAMPどちらも差し替えで使える(正バイアスを100KΩなど大きくするとバイポーラ入力のOPAMPは発振するのでそれの抑止)ようにしてあるところに起因し、トータルのゲインが低くなってしまうため増幅部のゲイン設定を高めにしないと「アンプがないほうが音が大きい」なんていう悲しい回路が出来てしまいます。正しくは使用するOPAMPの品種に応じた定数選択と回路設計をするべきで、音を追求するならそちらへ行くべきでしょう。が、うちは部品とっかえひっかえして遊ぶというコンセプトでやっていますので「大体何でもそこそこ鳴る」定数になっています。
 シミュレーションの画面を見ていただくと解ると思いますがボリュームがやや大きめの位置で入力電圧と同じ出力が出ています。ボリュームを回しきっても増幅できないのはアンプとは言い難いので、まぁぎりぎり元の音よりは増幅が可能な範囲に入っていることがわかりますね。
 念のため書いておきますが出力の弱いOPAMPではこのような結果にならず電圧が落ち込んで音量が取れない状態になると思います。原典サイトにも解説がありますがパワーが必要です。適宜バッファを帰還内後段に入れるか出力の取れるOPAMPを使いましょう。

 

MeierAMP改 回路図

[2011/03/07 新規]

 二段増幅タイプは何度か作っていましたが、今回知人の依頼で「濃いめの」「中域から高域に艶が欲しい」というリクエストに応えるべく、そういった傾向のOPAMPをチョイスして作ってみました。
 今まで仮実装までして結局採用しなかったCrossFeedを入れています。原典回路とはやや異なり2段目の入力ポイントから逆chの2段目帰還にハイパスをかけて戻すというのをやってみています。聴感としては上下の音場が狭まって横ないし後方に広がる形になって微弱ながらサラウンドっぽさが得られ、頭内定位がやや分散し前方にぼんやり移ります。※当然効果の殆ど解らないイヤホンやヘッドホンもあるでしょうし合う合わないといった相性が出るのは承知な回路。

 帰還をもどす負入力側に合成しているのは逆chの2段目を通す前の信号レベルになりますから逆相を入れて減算しているような動作をします。低域までこれをやると全体がぼやけた音になるためハイパスを通しています。ステレオを構成する左右別の成分は簡単にシミュレートが効かないためここのCや合成抵抗の定数についてはトライアンドエラーで不自然にならず効果が僅かに解る数値を何度も実験して追い込んでいます。
 CrossFeedのスイッチ近傍に入れてある470KΩはスイッチオープンの状態でCが片側だけ浮くのを避けているだけなのでフィルタを構成しているような意味はありません。

 本当の意味でのCrossFeedというのは残響効果を作るために反響時間分遅らせた成分を反対のchに加算してやる回路を呼びますが、ディレイをかけるような仕組みはBBDを使わないといけなかったり結構面倒なので擬似的なCrossFeedとなります。
 Meier特有のA級動作をさせるための、+Vと-Vにプルアップ・プルダウンする部分については終段にTrバッファを入れて常にアイドリングを流しているため省略しています。入れておいてもいいんでしょうけど、OPAMPが高温になることで発生するノイズとどちらを取るかといった感じでしょうか。負荷の軽い前段ではゼロクロスの歪みというのは無視できる量だと思っています。波形や歪み率の数値をみるかぎり影響なさそうですし。

 そして2段目には軽めのBassBoostが入れてあります。AD744やAD711なんかは高域の伸びはとても綺麗ですがやや低域がおとなしい感じがするのでほんのちょっとだけ味付け程度。
 MUSES01やMUSES02などの中域から高域にかけて明るいという印象は同じだけど傾向の違うOPAMPを使う場合はBassBoostなしのほうがすっきりします。

 

PortFull改 回路図

[2011/12/21 新規]

 ディスクリにも色々ありますが、まとめWikiに載ってる定番を順に試してみましょうということでPortFullを作成。基本的な定数はssmさんのところをほぼそのまま。初段の選別が不十分だったためか全然安定せず、オフセット調整については[作ったよ]氏のオリジナルと同じ位置に変更しました。基板レイアウトもssmさんのほぼそのまま。最適化されて完成してますので自分が頑張ってレイアウトしても行き着くところは同じになるだろうってことでそのままデッドコピーにしています。
 帰還のR7だけソケットにしてあれこれ調整してボリュームとのかねあいで使いやすいところにした程度で定数もあとそのまんまです。特筆することが特にないですね。

 初段の2SK30ATMと2段目の2SA1015Lおよび2SC1815Lは同型番同士を向かい合わせにアロンアルファで接着して熱結合してあります。接着したら上部にKとかAとかCってマジック書きして何を貼り合わせたのか解るようにしておきます。
 2段目のA1015ペア、C1815ペアはhFEをきっちり1%以内で合わせてあります。Vbeとかでも揃えるべきなんでしょうけど省略。終段はPNP内でhFE2%程度に、NPN内でhFE2%程度に揃えただけで上下はアンバランスです。パラった4素子均等に電流が流れるようにしてやってるだけです。コンプリペアとはいえA1015とC1815の特性は完全には一致しませんし、GRランク/Yランクをまとめて沢山買ったところで完全にペア取りができるわけでもありませんからここは妥協します。揃えたほうがもちろんいいんでしょうけど、200個入りの中で何ペアも取れないとかもしくは全く1つも取れないなんてことになりがちですので。

 音は何か特別にこりゃすげえぜ!なんていうことはなく、まぁ結構精細ですねってくらいです。

参考文献
 Solidstate manの憂鬱 http://solidstate.exblog.jp/4895126/
 ヘッドホンアンプをつくる http://ultragreenbook.blog85.fc2.com/blog-entry-1.html

(2012.01.17追記)
 SONY XBA-4SLのような超低インピーダンスのイヤホンを鳴らす場合、出力のR19は撤去直結して下さい。これがあると低域が落ちすぎてまともなバランスで鳴らなくなります。直結することで音量が大きくなりすぎるので帰還抵抗のR7を470Ω〜1.5KΩ程度に下げます。

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