うめAUDIO(仮称)


真空管アンプ[SINK]コラム01


 


 

 

ソケット化と部品差し替え

[2014/07/31]

 パーツの交換によって色々な傾向の音色を楽しむ方法として一番主流なのはOPAMPの換装です。OPAMPでも音が変わりますがそれ以上にこのSINKでは「真空管の交換」という楽しみ方が挙げられます。他にも抵抗やコンデンサを変更する事でもチューニングが可能となりますが全てのパーツが該当するわけではありません。
 開発試作機にて様々な箇所の部品を交換してテストを行いましたが、交換が意味の無い部分もあれば劇的に音が変化する部分もあることが解っています。ICソケット式にすることで部品の交換が容易となる半面、接点を増やしてしまう事にもなりますので闇雲に何でもソケットにすれば良いというものではありません(接点容量の増加、接触抵抗の増加、衝撃を与えた際に外れてしまう危険性など)。ここでは「どの部品を交換可能にしておくと良いのか/どの部品は直付けしておくべきか」を紹介していきたいと思います。何にどう変えてゆくかは今度のお楽しみということでまずはキット同梱の純正部品を装着しておきましょう。

 ここで差し替え可能とする際に使用するICソケットはシングルラインと呼ばれる一列のもので、適宜切断して使うものです。Bispaさんでは取り扱いがありませんのでショップを紹介しておきます。筆者はこれを10本や20本単位で買い置きしています。
シングルソケット(秋月電子)


【ソケット化推奨部品】
OPAMP (U2/12)
 組み立て済みの完成品でもここはソケットになっていると思います。2回路入りでオフセットの少ない、±2Vから動作可能であり、ユニティゲインで安定使用できるOPAMPが交換可能です(この2回路を便宜上別々の部品番号としてU2とU12という表現にしていますが1つの部品です)。交換対象として推奨されるOPAMPの一覧などは追々Bispaさんの商品ページもしくはこちらのコラムにて掲載予定ですので今暫くお待ち下さい。

真空管 (U1/11)
 5本足の5極管と4本足の3極管でヒーター電圧が1.25Vのものが使用可能です。5本足と4本足は2列にそれぞれ独立して設けられています。刺し間違えの無いように注意して下さい。使用可能な真空管についても別途後述いたします。

真空管の定数抵抗 (R3/13, R5/15, R6/16)
 R3/13はグリッド(G)バイアス用の抵抗で3極管と5極管で最適値が異なります。5676などの3極管では1MΩを、5678/1AD4などの5極管では2.2MΩ(2MΩでも可)を使います。
 R5/15はプレート(P)制御用の抵抗で各真空管によって最適値が異なります。推奨値は後ほど紹介いたします。
 R6/16はスクリーングリッド(G2)制御用の抵抗でこちらも各真空管によって最適値が異なります。3極管では使用しませんので部品を取り外して下さい(付けたままでも問題はありませんが若干特性が落ちます)。

スクリーングリッドのバイパスコンデンサ (C4/14)
 最低でも0.01uFほどの容量が必要です。不足していると仕上がりゲインが著しく低下します。一定以上の容量があると今度は音のトーン的なコントロールが可能な部分となります。フィルタを構成しているわけではないので単純な計算式では求まりません。0.01uF〜2.2uFくらいの範囲で色々と変えてみて好みの音を探してみて下さい。真空管によっても傾向が変わってきます。3極管では使用しませんので部品を外して下さい(付けたままでも問題はありませんが若干特性が落ちます)。

カップリングコンデンサ (C1/11, C2/12)
 真空管の入力部と出力部にはオフセットの電圧がかかっているため、この回路構成ではカップリングコンデンサの撤去はできません。(出力カップリングコンデンサに関してはOPAMPを正負両電源駆動としているOCL[=Output Coupling Less]のため最初からありません)
 入力カップリング及び真空管からOPAMPへ繋がる中間位置のカップリングには0.1uF〜2.2uFあたりのフィルムコンデンサまたは小型の電解コンデンサを使用します。計算上どちらも0.1uFもあれば低域のカットオフが可聴域より低いところになりますので重低音が痩せるような事はありませんが気になる方は0.22uFや0.47uF, 1uFなどをチョイスしても良いでしょう。ただしこれらをフィルムコンデンサで実装しようとすると外形が大きいものばかりとなるためきちんと入るかどうか確かめておく必要があります。近年の電解コンデンサは非常に高性能になっており、フィルムコンデンサの代わりに使用するのも手段の1つとして有用です(MWシリーズなど非常に優秀)。気をつけないといけないのは耐圧です。C1/11は6.3V耐圧程度で大丈夫ですがC2/12は電位差が16V以上になる部位なので耐圧が25V以上あるものを選んで下さい。
[2014/08/09追記]C2/12をソケットにした場合の注意です。C2/12がソケット化された場合に接触不良を動作中に起こすとOPAMPの入力に過大入力が掛かり、飛ぶ恐れがあります。その場合の保護用として小容量のチップフィルムコンデンサを裏面の予備ランドC2B/12Bに実装しておくと事故がある程度防げます。ここは16V以上の電位差があるのでECHU100pF〜2200pFあたりをチョイスする事をお勧めします。C2/12が浮いてしまっている状態ではこの追加した小容量のコンデンサだけで繋がるため低域が出なくなりますので解りやすいと思います。装着をし直したりソケットに対してコンデンサの足が細すぎてガタつく場合少し半田メッキしてやるなどしてしっかりソケットに食いつくようにしてあげて下さい。

帰還抵抗〜ゲイン切り替えジャンパ (R4/14, R4B/14B, J1/11)
 基板自体の仕様としては2種類の抵抗が実装可能になっており、ジャンパーピン(J1/11)によってゲインの切り替えが出来るようになっています。しかしながらBispaさんの判断でキットとしての標準状態ではR4〜R4Bの両端を用いて1種類の抵抗しか使わない事になっています。※何故かというと電源を入れたままジャンパを抜き差ししようとすると、急激に帰還量が一気に変化するためOPAMPが発振する事があることに加えて近隣ピンとショートさせてしまった際にヘッドホン・イヤホンを破損する危険性があるため、安全を優先してあるからです。電源をOFFにしていても実はすぐ近くに電源スイッチの足があって危ないので『ジャンパによるゲイン切り替えを使う人は必ず電池を抜いてから』を徹底して下さい。
 筆者はR4/14に20KΩを、R4B/14Bに30kΩを装着し、ジャンパなしで直列になるためトータル50kΩに、ジャンパありでR4/14のみ有効となり20kΩとなるようにして使っています。値が大きくなればなるほど仕上がりゲインは大きくなっていきますが真空管自身の増幅率が線形ではないため単純な計算式でゲインは算出できません。真空管によっても仕上がりのゲインは若干ずれます。また、この抵抗値は小さいほど低歪率となりますので音量が十分にとれる使用環境であれば20KΩ程度にしておくことを勧めます。インピーダンスの大きめなヘッドホンを使うときのみジャンパなしでハイゲインモードに切り替えるような使い方が良いかと思います。勿論ですがR4/14,R4B/14Bをソケットにしてしまえば適宜抵抗を差し替えて使い、ジャンパピンを実装しないというのもアリです。


(写真中の抵抗は装着の仕方の説明ですが抵抗値は適当です)
完成品およびキットの標準状態は下でジャンパは未使用。
R4/14とR4B/14Bをそれぞれ実装してやるとジャンパでゲイン切り替えになる。
※繰り返しますがジャンパ切り替えは電池を抜いてから。
尚、この回路図中にあるC3/13は補償コンデンサですがこれが必要になるほど発振しやすいOPAMPは今のところ確認できていません。基本的に不要です。


【ソケット化非推奨部品】
OPAMP正バイアス用抵抗 (R7/17)
 交換してもまるで音に影響がありません。OPAMPだけで構成される回路では音質にも多少関係のある部位ですが本回路構成では何故か無関係になります。さらに値を大きくしても小さくしても動作が不安定となる謎のポイントでこの定数以外にしても得る物が無いと思われます。100KΩで固定しちゃいましょう。

ノイズフィルターコンデンサ (C25, C26)
 DCDCコンバーターの一次側にはLC, RCフィルターが入っており、DCDCコンバーターがOPAMP側の電源にノイズを撒き散らさないようになっています。OS-CONはこういったノイズ除去の用途では不向きで低ESRコンが最適という実験結果が出ていますのでキット標準部品をそのまま使用することをお勧めします。

DCDCコンバーター二次側平滑コンデンサ (C6/16, C7/17)
 OS-CONなどの超低ESRコンデンサにしても共振原因になるためか駄目、普通のコンデンサでも能力不足で駄目で、適度に低ESRである品種がベストな性能を発揮する事が解っています。また、容量も無闇に大きくしたところでどんどん特性が悪くなるためキット標準の部品が最適解ということになります。径や高さの制限も結構厳しい部位なのでそもそも選択肢があんまり無いと思いますのでここはもう決めうちで固定しておくべき所。


【ソケット化要注意部品】
OPAMPデカップリングコンデンサ (C21, C22)
 音が変わるところなので交換出来るようにしておきたい部位ですが、いかんせんソケットにしてしまうと部品の高さが厳しくなります。ソケットなしでは径10mm×高さ16mmまでのコンデンサが使用可能ですがソケット化をするとケースの天井にぶつかりますので高さが12mm程度までに制限されてしまいます。ソケット化したケース無しの実験機で好みの音を調整して、決定したら本番機に直付けという方式が推奨となるかと思います。(遠回しに複数買ってくださいと言いたいわけでもありますが、それを抜きにしてもこの方式はお勧めです)


 基本的には面実装部品になっているところは、そもそも変更を推奨しない部位であり音質に直接の影響がない部分に限定されています。無理矢理面実装のところに高級抵抗や高級コンデンサを置き換えようとしないほうが賢明であると思います。特にDCDC電源部分については部品間の距離や高さが変更されるとかえってノイズを増やす結果にしかならないと思われます。あんまり居ないと思いますが念のため。

2014/08/02画像追加

フルソケット仕様の試作機。Rev1.00以降とは若干部品配置などが違います。
さすがに接点多すぎなのでこれはお勧めできません。


 

 

部品の乗ってないランド

[2014/07/31]

 C32Bとか余白があったり、電解コンデンサの裏側にC25Bのような補助のランドがあるのを疑問に思ったり不満に思った方も居ると思うので説明をしておきます。まず結論から、乗せる必要ありませんというよりも乗せると色々悪化すると思うので予備のランドは予備のまま空欄としておいて下さい。
 これらは将来的な拡張として未知のタイプの真空管であったりとか違う回路構成を実験するような時を想定した本当に予備であってオプションな部品番号です。完全にリザーブです。電解コンデンサの足に小容量のCを抱かせることで特性改善が見込める可能性もありますがそもそもランドが小さいのでフィルムコンやタンタルコンが選択できず積層セラミックコンデンサくらいしか乗りません。かえって変な共振を拾うようになってS/N比の低下や歪率の悪化に繋がると思われます。全部埋まっていないと気が済まないという方もいると思いますが我慢しましょう。

 特にC32BだとかDCDC電源まわりでコンデンサが乗っていないランドがいくつもあります。これらは出力する電圧と電流に応じた最適値があり、盛れば良いというものではありません。キットとして部品の用意されている容量が現段階の最適値です。後々の拡張・改造で使う可能性も無いわけではありませんが「蛇足」となりますので無闇に部品を追加しないようにして下さい。

 ただ1つだけ、シルクでなにやら書かれている未実装部、ジャンパで直結になっている電源入力部、ここには「低電圧遮断回路」を乗せる事が出来るようになっています(後日オプション部品として販売・頒布予定)。何をするものかと言いますと、電源を入れたままアンプを放置して動作電圧を下回っても本回路は構わずに消費していきます。多くのアンプがそのままにされてますが音が割れて酷い状態になるので普通は先に気付いて電池を交換すると思いますが、アンプの電源を入れたまま離席してしまい、無人で切れたら・・・電池の終止電圧よりも電圧が下回るほどに電池が過放電されて電池性能が著しくダメージといった事故に繋がる場合もあります。こういった過放電事故を防ぐために『電池4本直列で4Vを下回ったらアンプへの電源供給を遮断する』という機能となります。アンプに電力を供給しなくなると電池の電圧は回復しますが一度遮断されたら電池を交換するまでずっと遮断状態が維持されるような保護回路となります。近日オプションユニットとして登場予定ですのでご期待下さい。(本機以外の手製または市販のアンプにも応用が出来るかも??流用される場合は一言連絡を頂けると幸いです)

2014/08/02画像追加

ここに拡張パーツ(オプション)が乗ります


拡張パーツ試作品の表


拡張パーツ試作品の裏


 

 

部品番号の付番法則

[2014/08/02]

 R5とかR15みたいな番号の振り方についてざっと説明しておきます。もうお気づきの方も居ると思いますが回路上で左右それぞれに分かれているところが0番台と10番台でそれぞれ左と右になります。R5=左に対応する同じ箇所が右ではR15となっていて+10すればいいわけです。左右に分かれず全体で共通である部分が20番台、真空管用の昇圧回路まわりが30番台、真空管ヒーター用の降圧回路まわりが40番台、更に同じ部位に並列(一部だけ直列のところもあります)に複数の部品に分かれるところが末尾付きでC32A, C32B, C32Cのようなアルファベットが最後についた番号となっています。「この番号の部品はどこだ!」と探すときの目安にして頂けると多少効率アップになるかと思います。
 ※ただし完全にこの法則にのっとっているわけでもなくてD2のようなLEDのVf調整用ダイオードなんかは外れた番号になってますね。ミスなわけですが敢えて直すほどのことでもないので今後も改版されずこのままの番号で行くと思います。


 

 

 

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